「親がNISAで投資してるみたいだけど、もし亡くなったらあの口座ってどうなるんだろう…?」
「非課税って聞いてたけど、相続したら税金かかるの?」
NISAの利用者が年々増えるなか、こうした疑問を持つ方も増えています。特に親世代がNISAを使って資産運用をしているケースでは、万が一のとき「何をすればいいのかわからない」という状態になりがちです。
結論から言うと、親のNISA口座は相続できません。正確には、NISA口座の「非課税」という特典は名義人の死亡と同時に終了し、口座内の資産は相続人の「課税口座」に移管されます。
この記事では、親のNISA口座を相続するときの仕組み・税金・手続きの流れを、やさしめのトーンで整理していきます。
まず押さえたいポイント:NISAの「非課税枠」は相続できない
NISAの最大の魅力は、運用益(配当金や売却益)が非課税になることですよね。通常なら約20%かかる税金がゼロになるわけですから、かなり大きなメリットです。
ただし、この非課税の恩恵は「口座の名義人本人」に限定されています。名義人が亡くなった時点で、NISA口座は制度上廃止されます。
つまり、こういうことです。
- 親のNISA口座を、子どものNISA口座にそのまま移すことはできない
- 親のNISA口座の「非課税枠」を引き継ぐこともできない
- 相続人が受け取る場合は、特定口座や一般口座(=課税される口座)に移管される
「親がせっかく非課税で運用してたのに…」と感じるかもしれませんが、ここは制度上どうにもなりません。ただし、死亡日までに発生した含み益には税金がかからないという救済措置はあります。この点は後ほど詳しく解説します。
親のNISA口座の資産、相続税はかかるの?
「NISAは非課税」というイメージが強いので、相続のときも非課税だと思っている方がいますが、ここは明確に区別が必要です。
1)NISAの「非課税」は所得税の話
NISAで非課税になるのは、あくまで運用益(配当金・売却益)にかかる所得税・住民税(約20%)です。
一方、相続税はまったく別の税金です。NISA口座であっても、口座内の株式や投資信託はれっきとした相続財産として扱われます。
2)評価額は「死亡日の時価」
相続税の計算では、NISA口座内の金融商品は被相続人が亡くなった日の時価(終値)で評価されます。
たとえば、親がNISA口座で100万円分の投資信託を購入していて、亡くなった日の時価が150万円だった場合、相続財産としての評価額は150万円です。
ただし、相続税には基礎控除があります。
相続税の基礎控除 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
たとえば法定相続人が2人なら、4,200万円までは相続税がかかりません。NISA口座の資産だけでこの金額を超えるケースは少ないかもしれませんが、他の財産(不動産・預金・保険など)と合算して判定される点には注意が必要です。
含み益と含み損、それぞれどうなる?
NISAの相続で意外と見落とされがちなのが、含み益・含み損の取り扱いです。
含み益がある場合 → 死亡日までの利益は非課税
親がNISA口座で購入した株式の取得価額が100万円で、死亡日の時価が150万円だったとします。
この場合、50万円の含み益が出ていますが、この50万円には所得税・住民税はかかりません。NISA口座の非課税メリットは、名義人の死亡日まで有効だからです。
相続人の課税口座に移管された後は、死亡日の時価(150万円)が新たな取得価額になります。その後、たとえば180万円で売却すれば、差額の30万円に対して約20%の税金がかかります。
含み損がある場合 → ちょっと厄介
逆に、親の取得価額が100万円で、死亡日の時価が70万円に下がっていた場合はどうなるでしょうか。
この場合、相続人の取得価額は70万円にリセットされます。つまり、親が買ったときの100万円という情報は引き継がれません。
もし相続後に株価が100万円に戻って売却した場合、取得価額70万円との差額30万円に課税されます。親から見れば「元に戻っただけ」なのに、相続人にとっては利益が出た扱いになるわけです。
通常の課税口座(特定口座など)で相続する場合も取得価額は死亡日の時価になる点は同じですが、課税口座であれば含み損を他の利益と損益通算できる場面もあります。NISA口座ではそれもできないため、含み損がある状態での相続は、やや不利になる可能性があることは知っておきましょう。
相続の手続き:何を、どこに、いつまでに?
実際に親が亡くなった場合、NISA口座に関する手続きは以下の流れで進みます。
ステップ1:金融機関に連絡する
まずは親がNISA口座を開設していた金融機関(証券会社・銀行など)に、名義人が亡くなったことを連絡します。
電話で「口座名義人が亡くなりました」と伝えれば、相続手続きの案内と必要書類が送られてきます。
ステップ2:「非課税口座開設者死亡届出書」を提出する
NISA口座特有の手続きとして、「非課税口座開設者死亡届出書」という書類を金融機関に提出する必要があります。
法令上の期限は「死亡したことを知った日以後、遅滞なく」とされています。明確な日数制限はありませんが、後回しにするメリットもないので、相続手続き全体と並行して早めに済ませましょう。
ステップ3:必要書類をそろえる
金融機関によって多少異なりますが、おおむね以下の書類が必要です。
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 非課税口座開設者死亡届出書 | 金融機関から取得 |
| 相続届(金融機関所定の書式) | 金融機関から取得 |
| 被相続人の戸籍謄本(出生~死亡) | 相続人の確定に必要 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 現在のもの |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 発行から3~6ヶ月以内 |
| 遺産分割協議書 または 遺言書 | 誰が相続するかを証明 |
| 本人確認書類(相続人) | マイナンバーカード等 |
なお、戸籍謄本の取得は意外と手間がかかります。特に被相続人の「出生から死亡まで」の連続した戸籍は、本籍地が変わっていると複数の自治体に請求が必要になることもあります。早めに動き始めることをおすすめします。
ステップ4:資産の移管先を決める
NISA口座の資産は、相続人の課税口座(特定口座 or 一般口座)に移管されます。ここで注意したいのが、親のNISA口座と同じ金融機関の口座にしか移管できないという点です。
たとえば親がSBI証券でNISA口座を持っていた場合、相続人もSBI証券に口座を持っている必要があります。口座がなければ新規開設が必要です。
ステップ5:移管完了 → その後の運用判断
移管が完了すれば、あとは通常の課税口座での運用と同じです。そのまま保有し続けるか、売却するかは相続人の判断になります。
売却した場合の譲渡所得は、「売却価格 − 死亡日の時価(=取得価額)」で計算されます。
見落としがちな3つの注意点
1)死亡日以降の配当金・分配金は課税される
NISA口座の非課税メリットは名義人の死亡日で終了します。そのため、死亡日以降に支払われる配当金や分配金には、通常どおり約20%の税金がかかります。
「まだ口座が残ってるから非課税でしょ?」と思いがちですが、制度上はすでに非課税ではなくなっている点に気をつけてください。
2)相続税の申告期限は死亡から10ヶ月
相続税の申告・納付期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。NISA口座の手続き自体に法定の期限はありませんが、相続税の申告に間に合うように進めるのが現実的です。
NISA口座の資産額が相続財産全体の一部にすぎなくても、正確な評価額を出すために早めの手続きが必要になります。
3)親がNISA口座を持っていたかわからないケース
意外と多いのが「そもそも親がNISAをやっていたかどうかわからない」というケースです。
この場合は、以下の方法で調べることができます。
- 証券会社・銀行からの郵便物や通知を確認する(取引報告書、特定口座年間取引報告書など)
- 通帳の取引履歴を確認し、証券会社への入出金がないか調べる
- 心当たりのある金融機関に直接問い合わせる
- 証券保管振替機構(ほふり)に「登録済加入者情報の開示請求」を行う(故人がどの証券会社に口座を持っていたかがわかる)
親が元気なうちに「どこの金融機関で何の口座を持っているか」を共有してもらうのが理想ですが、難しい場合はこうした方法で確認できます。
生前にできる備え:「NISA口座の存在」を家族に伝えておく
ここまで読んで「手続きが多くて大変そう…」と感じた方もいるかもしれません。
実際、NISA口座の相続は、口座の存在を知らなければ手続きが始められないし、金融機関も相続人の申し出がなければ動けません。
親が元気なうちにやっておくと、いざというときスムーズになることをまとめます。
- NISA口座を開設している金融機関名を家族に伝えておく
- おおまかな運用額を共有しておく(細かい銘柄までは不要)
- ログイン情報をエンディングノート等に記録しておく
- 可能であれば、遺言書や財産目録にNISA口座の情報を含めておく
「お金の話は家族でしにくい」という声はよく聞きます。ただ、NISAに限らず、金融資産の情報共有は相続をスムーズに進めるための大きな備えになります。
まとめ:親のNISA、焦らず・でも早めに手続きを
この記事のポイントを振り返ります。
- NISA口座の「非課税枠」は名義人の死亡と同時に終了する。相続人のNISA口座に移管はできない
- 口座内の資産は相続人の課税口座(特定口座 or 一般口座)に移管される
- 死亡日までの含み益には所得税がかからないが、死亡日以降の運用益は課税対象
- NISA口座の資産は相続税の対象。死亡日の時価で評価される
- 取得価額は死亡日の時価にリセットされる。含み損がある場合はやや不利になる可能性あり
- 手続きには「非課税口座開設者死亡届出書」の提出が必要。同じ金融機関の口座にしか移管できない
今日からできるアクションプラン
- 親がNISA口座を持っているか確認する(持っている場合は金融機関名を把握しておく)
- すでに相続が発生している場合は、金融機関に連絡して手続きの案内を受ける
- 相続税の申告が必要かどうか、相続財産の全体像を把握する(基礎控除の範囲内か確認)
- 判断に迷う場合は、税理士への相談を検討する(相続税の申告は専門性が高いため)
NISAの相続は、知っているかどうかで手続きのスムーズさがまったく変わります。この記事が、少しでも不安を減らすきっかけになれば幸いです。
自分のペースで、少しずつ備えていきましょう。
