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個人事業主に生命保険は必要?最低限の保障と経費にできる保険の違い

個人事業主に生命保険は必要?最低限の保障と経費にできる保険の違い 資産・保険・相続
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「個人事業主に生命保険って必要?」――会社員との違いを踏まえて考えましょう

「フリーランスになったけど、生命保険ってどうすればいいの?」「会社員時代に入った保険、そのままでいいのかな?」「経費にできる保険があるって聞いたけど、どういうこと?」――個人事業主の保険選びは、会社員とは事情がまったく違います。

結論から言うと、個人事業主は会社員より公的保障が薄い分、最低限の生命保険は必要です。ただし、「経費にできる保険」と「所得控除になる保険」は別物なので、混同しないことが大切です。

この記事では、個人事業主が生命保険を検討するときに知っておくべきポイントを、やさしめのトーンで整理していきます。

そもそも個人事業主は会社員より保障が薄い

会社員と個人事業主の公的保障の違い

まず前提として、個人事業主と会社員では公的な保障に大きな差があります。この差を理解しないまま保険を選ぶと、必要な保障が足りなかったり、逆に過剰な保険に入ってしまったりします。

項目会社員個人事業主
遺族年金遺族基礎年金+遺族厚生年金遺族基礎年金のみ
傷病手当金最長1年6ヶ月(給与の約2/3)なし
労災保険あり(会社負担)原則なし(特別加入を除く)
退職金あり(会社による)なし
障害年金障害基礎年金+障害厚生年金障害基礎年金のみ

特に大きいのが遺族厚生年金がないこと傷病手当金がないことの2つです。会社員なら万が一のときに遺族厚生年金が月額5〜10万円程度上乗せされますが、個人事業主にはこれがありません。

遺族基礎年金だけでは足りないケースが多い

遺族基礎年金は、18歳未満の子がいる配偶者または子に支給されます。2026年度の支給額は以下の通りです。

  • 子1人:約109万円/年(月額約9.1万円)
  • 子2人:約133万円/年(月額約11.1万円)
  • 子3人:約142万円/年(月額約11.8万円)

※2026年度の遺族基礎年金は基本額847,300円/年。子の加算は1人目・2人目が各243,800円、3人目以降は81,300円です。

月9〜12万円で家族の生活費をまかなうのは現実的ではありません。子どもが18歳になると支給が終わる点にも注意が必要です。この不足分を補うのが、生命保険の役割です。

個人事業主に最低限必要な保障とは

1. 死亡保障:遺族の生活費+事業の後始末費用

個人事業主が亡くなった場合、遺族には「生活費」だけでなく「事業の清算費用」もかかります。

  • 遺族の生活費(公的年金で足りない分)
  • 子どもの教育費
  • 住宅ローンの残債(団信がない場合)
  • 事業の清算費用(リース解約、オフィスの原状回復、外注費の精算など)
  • 相続税の納税資金

必要保障額の計算方法については、「生命保険の必要保障額|遺族の生活費と事業清算費用から考える」で詳しく解説しています。

2. 就業不能への備え:働けなくなったときの収入補填

会社員には傷病手当金がありますが、個人事業主にはありません。病気やケガで3ヶ月間働けなくなっただけでも、収入ゼロ+固定費は発生し続けるという事態になります。

就業不能リスクへの備えとしては、以下の選択肢があります。

備え方月額の目安特徴
就業不能保険(収入保障保険)2,000〜5,000円毎月定額が支給される。精神疾患は対象外の商品が多い
所得補償保険3,000〜8,000円損害保険タイプ。短期(1〜2年)の補償が主流
緊急予備資金(貯蓄)生活費の6ヶ月分が目安。保険料がかからない

理想は生活費6ヶ月分の貯蓄+就業不能保険の組み合わせです。貯蓄だけでカバーできるなら、無理に保険に入る必要はありません。

3. 医療保障:高額療養費制度を理解してから判断する

医療保険に入るかどうかは、まず高額療養費制度の存在を知ったうえで判断しましょう。この制度を使えば、月の医療費の自己負担額には上限があります。

年収の目安月の自己負担上限(概算)
〜370万円約57,600円
370〜770万円約80,100円+α
770〜1,160万円約167,400円+α

※上記は2026年7月までの現行の自己負担上限額です。2026年8月から段階的に上限額が引き上げられることが決まっています(2027年8月にはさらに所得区分が12区分に細分化予定)。最新の金額は厚生労働省のWebサイトでご確認ください。

つまり、貯蓄が100万円以上あれば、医療費で即座に生活が破綻することは少ないのです。医療保険は「入院中の収入減」や「差額ベッド代」に備えるものと割り切り、優先度は死亡保障・就業不能保障の次と考えるのが合理的です。

「経費にできる保険」と「所得控除になる保険」の違い

ここが最も混同されやすいポイントです。個人事業主が支払う生命保険料は、原則として「経費」にはなりません

経費にできない保険(=所得控除の対象)

個人事業主本人の生命保険料・医療保険料は、事業の経費ではなく「生命保険料控除」として所得控除の対象になります。

控除の種類対象となる保険控除上限(年間)
一般生命保険料控除定期保険、終身保険、収入保障保険など4万円
介護医療保険料控除医療保険、がん保険、介護保険など4万円
個人年金保険料控除個人年金保険(税制適格特約付き)4万円

3種類すべて合わせても最大12万円の所得控除です。所得税率20%の方なら、節税効果は最大で年間24,000円+住民税分。保険料が年間10万円を超えても、控除額は4万円で頭打ちになります。

※2026年分の所得税に限り、23歳未満の扶養親族がいる世帯は、一般生命保険料控除の上限が4万円→6万円に引き上げられる時限措置があります(控除全体の上限12万円は変わりません)。

つまり、「節税のために生命保険に入る」のは個人事業主にとっては非効率です。保障が必要だから入る、という判断が正しい順番です。

経費にできる保険

では、個人事業主が経費として計上できる保険は何でしょうか。

保険の種類勘定科目経費にできる理由
事業用の火災保険・地震保険損害保険料事業用資産(事務所・設備)の保険だから
事業用車両の自動車保険損害保険料(車両費)事業用車両の保険だから
賠償責任保険(PL保険など)損害保険料事業上のリスクに備える保険だから
従業員の生命保険・労災上乗せ保険福利厚生費従業員のための保険だから
所得補償保険(損害保険タイプ)損害保険料事業収入の補填を目的とする損害保険だから

ポイントは「事業に関係する保険は経費」「個人の保障に関する保険は所得控除」という線引きです。自宅兼事務所の火災保険であれば、家事按分で事業使用割合分を経費計上できます。

よくある誤解:「法人なら生命保険が経費になるのに」

法人の場合、役員を被保険者とする定期保険や逓増定期保険の保険料を損金(経費)に算入できるケースがあります。この情報が広まった結果、「生命保険=経費にできる」という誤解が生まれています。

しかし、これは法人の話です。個人事業主が自分自身にかける生命保険は、いくら高額でも経費にはなりません。「節税のために生命保険に入りましょう」という営業トークには注意してください。

保険よりも優先すべき「経費になる備え」

個人事業主が将来の備えと節税を両立させたいなら、生命保険よりも以下の制度を優先的に活用するのが合理的です。

制度年間の上限節税効果(所得税率20%の場合)特徴
小規模企業共済84万円約16.8万円+住民税掛金全額が所得控除。廃業・退職時に受取
iDeCo(個人型確定拠出年金)81.6万円 ※約16.3万円+住民税掛金全額が所得控除。60歳以降に受取
経営セーフティ共済240万円全額が経費取引先の倒産に備える共済。40ヶ月以上で全額戻る
国民年金基金81.6万円(iDeCoと合算)※掛金全額が所得控除終身年金を上乗せできる

iDeCoと国民年金基金の掛金上限に関する重要な注意点:個人事業主(第1号被保険者)の場合、iDeCoと国民年金基金(付加保険料を含む)は合算で月額68,000円(年間81.6万円)が上限です。たとえば国民年金基金に月3万円拠出している場合、iDeCoに拠出できるのは月38,000円までとなります。両方を満額にすることはできません。

※2027年1月からiDeCoの掛金上限が月額75,000円(年間90万円)に引き上げられる予定です。国民年金基金との合算上限も同額に変更されます。

たとえば、小規模企業共済を満額(月7万円)+iDeCo・国民年金基金を合算上限まで(月68,000円)積み立てると、年間165.6万円が所得控除になります。生命保険料控除の最大12万円と比べると、節税効果の差は歴然です。

「備え」と「節税」を両方求めるなら、まず小規模企業共済とiDeCoを活用し、その上で必要な保障を生命保険で補うという順番がおすすめです。

個人事業主の保険選び:3つのステップ

ステップ1:公的保障の不足額を把握する

遺族基礎年金や高額療養費制度で、どこまでカバーされるかを確認します。公的保障で足りない部分だけを民間の保険で補うのが基本方針です。

ステップ2:優先順位をつける

個人事業主の保険の優先順位は以下の通りです。

  1. 死亡保障:扶養家族がいる場合は最優先。定期保険か収入保障保険で必要な期間だけカバーする
  2. 就業不能保障:傷病手当金がないフリーランスにとって重要度が高い
  3. 医療保障:高額療養費制度+貯蓄で対応できるなら優先度は低い
  4. 老後の備え:iDeCo・小規模企業共済が先。個人年金保険は控除枠が余っていれば検討

独身で扶養家族がいない方は、死亡保障の優先度は下がります。その場合は就業不能保障+緊急予備資金の確保を優先しましょう。

ステップ3:保険料の目安を決める

保険料の目安は手取り収入の5〜7%程度が一般的です。フリーランスは収入が変動するため、固定費となる保険料は控えめに設定するのが安全です。

年間所得月の保険料目安(5〜7%)
300万円12,500〜17,500円
500万円20,800〜29,200円
700万円29,200〜40,800円

ただし、これはあくまで目安です。保険料を払いすぎて事業資金が足りなくなっては本末転倒です。生活費6ヶ月分の貯蓄を確保してから、保険を検討するくらいの順番で問題ありません。

まとめ:保険は「必要な保障を、必要な分だけ」

この記事のポイントを振り返ります。

  • 個人事業主は会社員より公的保障が薄い。遺族厚生年金・傷病手当金がない分、民間保険での備えが重要
  • 個人の生命保険料は「経費」にならない。「生命保険料控除」として所得控除になるが、上限は年間12万円
  • 経費にできるのは事業に関係する保険(火災保険・自動車保険・賠償責任保険・所得補償保険など)
  • 節税目的なら、小規模企業共済・iDeCoの方が効果が大きい。保険は節税のためではなく、保障のために入る
  • iDeCoと国民年金基金は合算で月68,000円が上限(2027年1月から月75,000円に引き上げ予定)。両方を満額にはできない
  • 保険の優先順位:死亡保障(扶養家族あり)→ 就業不能保障 → 医療保障 → 老後の備え
  • 「保険で節税」という営業トークには注意。個人事業主と法人では税務上の扱いが異なる

今日からできるアクションプラン

  1. 遺族基礎年金の受給額を確認する:日本年金機構のWebサイトで自分の加入状況をチェック
  2. 現在加入中の保険を一覧にする:保障内容・月額保険料・満期を整理して、重複や不足を把握
  3. 生活費6ヶ月分の緊急予備資金があるか確認する:なければ保険よりも貯蓄を優先
  4. 小規模企業共済・iDeCoの加入状況を確認する:未加入なら、保険の前にこちらを検討

保険は「入れば安心」というものではなく、「足りない分だけ補う」ものです。公的保障と自分の貯蓄でカバーできる範囲を把握して、必要な保障を必要な分だけ選びましょう。

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